アウトプット仮説とは?効果や学習法、第二言語習得における重要性を解説
スウェインが提唱するアウトプット仮説とは
アウトプット仮説とは、カナダの言語学者であるメリル・スウェインが、第二言語習得の分野で提唱した仮説の一つです。
これはスティーブン・クラッシェン氏が、研究において「言語習得はインプットだけで可能」と提唱していたインプット仮説に対し、「英語の習得にはインプット(英単語や英文法を覚える)だけでなく「書く(writing)」「話す(talking)」アウトプットも必要である」と反論した仮説です。
スウェインは「アウトプットをしないと、文法的な正確さやシチュエーションに応じた表現を使える力が養えない」と主張し、インプットと同じぐらいアウトプットも重要であることを説いていました。
日本におけるアウトプット仮説の必要性・重要性
アウトプットによって本当の意味で英語が身に付く
アウトプット仮説の必要性は、日本の英語授業を振り返ると理解できるでしょう。
日本では中学校や高校で英語を学びますが(※)、計6年間英語を勉強しても学校の授業だけで英会話ができるようになる人はほぼいないといってもいいでしょう。
なぜ話せないのか、その理由は学習時間が少ないことも関係していますが、学校の英語の授業はインプットが主流になるため、アウトプットの機会がほとんどないことが挙げられます。
つまり、英語を習得するにはインプットだけでなくアウトプットも実践していく必要があるのです。
※2020年度から全国の小学校で英語教育の必修化が実施されています。
日本の英語学習ではアウトプットが不足している
今まではたくさんの英単語や文法を覚えてきたのに、英会話が一向に話せるようにならない方はアウトプットが不足している可能性があります。
第二言語は勉強して覚えるインプットだけでなく、覚えた英語を実際に使うアウトプットをしてこそ習得できるので、アウトプット仮説はとても重要なのです。
第二言語習得におけるアウトプット仮説の効果
英会話が話せるようになるには、「話す」「書く」というアウトプットが重要だということはほとんどの方が知っているでしょう。
しかし、アウトプットの効果はただ「英語が話せるようになる」「書けるようになる」というだけではありません。
実はアウトプットを実践することは第二言語習得に大きな効果があるからです。具体的にどういった効果があるのかをご紹介していきましょう。
自分の英語レベルに気がつけるNoticing function(気づき機能)
アウトプット仮説には、自分の英語レベルに気がつくことができる効果があります。
インプットしかできていないと、いざアウトプットをするときに「どんな英単語を使えばいいか」「なんと言えば伝わるか」など迷ってしまうことがありますが、この
迷いによって自分の知識と伝えるスキルのギャップに気が付くことができます。
たとえば1万個の英単語を覚えると英語レベルが高くなったような気分になります。しかし、アウトプットをしてみると覚えた英単語や文法を使いこなせないことが分かるのです。
アウトプットによって自分の英語レベルに気がつけば、新たに知識を得る努力をしたり、今まで得た知識を生かせるよう強化したりするきっかけになり、より効率よく英語学習を進めることにもつながります。
勉強中の言語の仮説を検証できるHypothesis-testing function(仮説検証機能)
スピーキングのアウトプットを実践すると、勉強中の言語が正しく使えているか(仮説※)を検証できます。
アウトプットの結果、相手がそのまま会話を続けてくれれば英語が通じていると判断できますし、聞き返されてしまったら通じていない、つまり自分の英語が正しく伝えられていないことが分かるのです。
仮説をアウトプットにより検証して、自分が今まで学んできた言語が正しいのか、間違っているのかのフィードバックを得られれば、今後の英語学習にその結果を生かせます。
※「勉強中の言語の仮説を検証できる」における「仮説」は、第二言語を習得する過程の「中間言語を使って話す英文」のことを指します。
自分が話した英語を振り返ることができるMetalinguistic function(メタ言語的機能)
アウトプットをすると、自分が話した英語を振り返れるのでメタ言語的機能が働きます。
メタ言語機能は、表現するために使った「ことば」を意識させることで、簡単にいうと注釈の機能になります。
インプットをしているだけではメタ言語機能は働きませんが、アウトプットをすると、過去形にした方がよいのか現在完了形で言えばいいのか、「the」を入れるか「a」を入れるかなど、自分が使う「ことば」に立ち止まり熟考するメタ言語機能が働くと言われています。
そのため、他者に対して英語を話せばメタ言語機能が働き、自分の英語をより細かく意識できます。
また、正しい英語と、間違った英語をしっかり認識することができるので、正確な単語や文法を身につけられるのです。
参考記事:メタ言語機能の働く表現 file:///C:/Users/missu/Downloads/4.pdf
インプット仮説とアウトプット仮説との違い
冒頭でも軽く触れましたが、インプット仮説はスティーヴン・クラッシェン氏が提唱した仮説で、「理解可能」な言語をインプットしていれば英語を習得できるという理論です。
一方、アウトプット仮説は英語をノートや紙に書いたり、英文を声に出して読んだり、実際に外国人と英会話で話すなどインプットした情報を外に出す(産出・出力)ことで言語の構文の正確さを習得するという学習方法です。
つまり、覚えるのがインプット仮説で、覚えたことや知っていることを外に出していくのがアウトプット仮説となるので、両者はまったく違う仮説になります。
そしてもう一つ大きな違いは、インプット仮説ではアウトプットの言語習得に対する役割を「ごく限定的な役割を果たすに過ぎない」としていますが、アウトプット仮説ではインプットは言語習得に「必要だが十分ではない」としていることです。
※参考記事:言語習得におけるインプットとアウトプットの果たす役割:https://www.jpf.go.jp/j/urawa/about/bulletin/pdf/14/paper-01.pdf
インプット仮説の例
たとえば、「私は昨日、夕飯を○○」という文章を見た場合、日本語をインプットしている人であれば、○○に当てはまるものとして「食べた」「作った」「食べなかった」などの言葉を予測できます。
これは英語でも同じで、たくさんの英語をインプットしていれば英語を聞いたり読んだりしたときに○○に入る英単語を予測できるため、インプット仮説を実践することで英語の習得スピードが速くなると考えられているのです。
アウトプット仮説を効率よく活用できる英語学習法
アウトプット仮説は、第二言語習得において多くの重要な役割を果たしています。
ただ、今までアウトプットもある程度やっていたが、あまり効果を実感できていないという方もいるかもしれません。
効果が実感できないのは、アウトプットの学習法に問題があるか、習慣化ができていない可能性が考えられます。
ここでは、第二言語習得の観点からアウトプット仮説を効率よく活用できる英語学習法を4つご紹介するので、習慣化できそうなことから始めてみてください。
SNSは英語で書く
TwitterやInstagram、FacebookなどのSNSを活用しているのであれば、まずはこれらに書く文章を英語にしてみましょう。
SNSに書き込む文章は一般的に短文でアウトプットのハードルが低く、スマホから手軽に投稿できるので毎日続けやすいというメリットがあります。
毎日発信をしていれば、海外からのコメントが付くこともあります。
英語のコメントがくれば、それを訳すことが勉強に繋がりますし、人に読んでもらえれば英語で発信するモチベーションもアップします。
たとえ一行の英文であっても、自分で考えたり正しい文法を使ったりするのはライティングアウトプットの習慣化に最適な方法です。
スキマ時間にセルフディスカッションをする
スピーキングのアウトプットとなるとまとまった時間が必要、というイメージがあるかもしれませんが、ちょっとした時間にセルフディスカッションをすることがアウトプットに繋がります。
セルフディスカッションといっても難しいものではなく、自分が思い付いたことを英語で言ってみたり、自分で自分に質問をして答えたりするだけで十分です。
たとえば、朝起きたら「What do you eat this morning?」(今朝は何を食べる?)と自分に聞いて、「Let’s eat rice, takuan and miso soup」(ご飯とたくあんとお味噌汁を食べよう)と答える、という感じです。
こういった簡単な英語のアウトプットで勉強になるのか、と思うかもしれませんが、日常英会話は海外でも案外単純な英語を使うことが多く、一説では中学レベルの英語で大体の日常会話はできると言われています。
そのため、簡単でもいいのでアウトプットを続けることで、実践的な英会話ができるようになります。
英語で日記を書く
ライティングのアウトプットを強化するのにおすすめなのが、英語で日記を書くという勉強法です。
初心者の方だと英語の文章を書くのは難しいかもしれませんが、最初は文法や単語を調べながらでも大丈夫です。調べることで正しい文法や、新しい単語を覚えることができます。
日記帳に書くのもいいですし、ブログアプリを活用してもいいでしょう。SNSは短い文章で物足りないという方も、日記であれば長めの英文作成の練習ができるので、より多くのアウトプットが可能です。
オンライン英会話でスピーキングの機会を増やす
アウトプットを活用した英語学習法で一番のおすすめなのは、オンライン英会話でスピーキングの機会を増やすことです。
なぜならオンライン英会話は1レッスン160円、月額で6,000円ほどの格安で毎日外国人の講師とスピーキングによるレッスンができるからです。
オンライン英会話に限らず英会話スクールでもスピーキングのアウトプットはできますが、スクールのマンツーマンレッスンの月額料金は2万円から3万円が相場と、非常に高額です。
おまけにレッスン回数は平均月4回なので、1レッスンあたりの単価は5,000円から5,500円。仮にオンライン英会話と同じように毎日レッスンを受けた場合は1ヵ月で15万円以上もかかってしまいます。
一方オンライン英会話は、マンツーマンで毎日レッスンを受けても月額料金の相場は5,000円から6,000円(1レッスンあたりの料金は約166円から200円)となっているので、スクールのおおよそ1/30というリーズナブルな価格で毎日アウトプットができます。
オンライン英会話は格安で高品質のレッスンが受けられる
価格の差は1/30にも関わらず、レッスンの内容はスクールと大差がなく、自分が正しい英語を話せているか、英語の発音は間違っていないかなども確認可能です。
スピーキングのアウトプットに関しては筆者もしばらく一人で頑張っていましたが、実践の場がないと英会話スキルは身に付かないことを痛感しました。
オンライン英会話を始めてからは自分の発音や文法のルールなどを講師にチェックしてもらうことで、大げさでなく飛躍的に英会話スキルがアップしました。
考えてみれば当たり前なのですが、英会話アウトプットをするなら外国人と定期的に会話できる環境を整えるのは必須です。
おすすめのサービスはDMM英会話
筆者が活用したのは、DMM英会話というオンライン英会話です。
オンライン英会話といえばECCオンライン英会話やジオスオンラインなどが有名ですが、ECCは月額8,866円、ジオスは月額8,878円と少し高めの料金設定になっています。
しかし、その割にレッスンや講師の質はあまり高くなく、不満もありました。
一方でDMM英会話は、ECCやジオスオンラインと同じ毎日1レッスンのプランが月額6,480円と、2,000円以上リーズナブルな価格で受講できます。
また、DMM英会話には126ヵ国の講師が在籍しており、質も非常に高いですし、さまざまな国籍の講師と話すことで、それぞれの国で正しいアクセントに矯正してもらえるのでアウトプットに最適です。
ちなみに最初は1レッスンコースでしたが、もっとアウトプットしたいと思い、途中から毎日2レッスンコースにしました。それでも英会話スクールと比較すれば破格の税込10,780円しかかからないのでコスパも最高です。
DMM英会話は無料で体験レッスンを2回受講できますので、スピーキングのアウトプットを始めたいという方はぜひチャレンジしてみてください。
DMM英会話:https://eikaiwa.dmm.com/
スウェインのアウトプット仮説まとめ
アウトプット仮説はインプット仮説と対峙するものではなく、「インプットも大事だが、それだけでは英語を習得できないのでアウトプットも重要である」ということを説いている仮説です。
外国人との接点が少なく、インプットの機会はあってもアウトプットの機会がほとんどない日本人にとっては、とても分かりやすい仮説ではないでしょうか。
赤ちゃんは学校で勉強をしなくても自分で言葉を話すことで言語を習得していきますが、これと同じで第二言語もただ頭の中に知識を詰め込むだけでなく、アウトプットをしないと「伝わる英語」を話せるようになるのはかなり難しいです。
今はわざわざ高額な英会話スクールに行かなくても、気軽かつリーズナブルな価格でアウトプットトレーニングができるオンライン英会話があります。
アウトプットで知識を生かした実践英会話を取り入れれば、その効果により今まで滞っていた英語学習もスムーズに進み始めるので、ぜひオンライン英会話などアウトプットできるサービスを活用して学習効率をアップさせていきましょう。